現地説明会
フォトレポート 中埣Ⅲ遺跡現地公開を行いました。(9月25日)
9月25日(水)、住田町上有住にある中埣Ⅲ遺跡の現地公開を行いました。
当日の資料は こちら
中埣Ⅲ遺跡は周囲をぐるりと山に囲まれ、東西と北側を沢が流れている緩やかな北斜面にあります。近くでは中埣Ⅰ跡や中埣Ⅳ遺跡など、縄文時代の遺跡が多く見つかっています。
13時30分からの開会に大勢の人が集まっています。地元の方も多いようです。
早速現場に行ってみましょう。
調査区の北西側にある竪穴住居です。立派な石囲炉ですね。二つあるように見えますが、この住居は2棟が重なっており、手前の炉は古い住居のもののようです。
隣にもやや小さい竪穴住居があります。もし、同じ時期のものなら、隣の大きい住居と何か関係があるのでしょうか。
調査区の中央にある大型の竪穴住居です。この住居は壁際に石が立て並べられています。残念なことに北半分(写真手前)は後世の削平で石が失われています。
壁際にずらりと並べられた石の列です。
よく見ると内側に傾いているようです。なぜでしょうか。
大きな住居の床面には炉もありました。
遺跡では掘立柱建物も見つかっています。
4本柱の建物で、柱をつなぐとほぼ正方形になります。たくさん出ていて、45棟以上あるそうです。テープで結んでいるのがその建物です。
なお、来場者の方から、調査員の足元の細くて深い溝は何ですか、との質問がありました。
答えは「落し穴」でした。写真左側の深い溝も同じです。手が届かないほど深く、ここに脚を取られたら、動物は抜け出せないかもしれません。
山に囲まれ、水場もある遺跡周辺は猟に格好の場所であったらしく、細い溝の落とし穴のほかにも、右側の穴のような楕円形や長方形の落とし穴もたくさん見つかっています。
これは、長方形の落とし穴で、底に杭を刺した穴が3つあります。確実に獲物をしとめるためでしょうか。
これは円形の落とし穴の断面です。
白い矢印の示す黄褐色の土層は、5,000年以上前に十和田火山から降ってきた中掫(ちゅうせり)火山灰です。
この火山灰が埋土に入っているということは、落とし穴はそれより古い時期のものであることを示しています。
さらにアップしてみると、黄色の矢印が示す縦に長い土層があります。これは先ほど見たような溝状の落し穴の断面で、丸い落とし穴を切って掘られていいます。溝状の落し穴は、この丸い落とし穴より、新しいようですね。
調査区内は、このように掘立柱建物、お墓と考えられる土坑、落とし穴などがたくさん見つかり、まさに足の踏み場もない場所もあります。
テント内には見つかった遺物を展示しています。
埋設土器に使われた深鉢や小型の壺、注口土器などがあります。ピカピカに磨かれた模様の美しい壺や注口土器には、誰しも心がひきつけられるようです。
今回の調査では、特に石器や石製品が多く見つかりました。
参加者の皆さんには直接遺物に触れて、磨石(すりいし)や石皿などの使用して摩耗した部分や石棒などの石製品の磨かれた部分を感触で確かめてもらいました。3,000年の時を経て皆さんの掌にある遺物は何を語っていたでしょうか。
ご参加いただきありがとうございました。
2024年9月27日掲載
※このホームページは公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターが、調査した遺跡の情報を提供しています。 掲載されている情報の無断転載はできません。