イベントレポート
復興調査展 in 宮古市 開催レポート
9月23日(木・秋分の日)~26日(日)の4日間に、宮古市民文化会館を会場として「復興発掘調査展in宮古市」を開催しました。今回はその様子をご紹介します。
復興発掘調査展は、東日本大震災からの復興事業に伴い沿岸全域で進められた遺跡発掘調査について、その成果の紹介を主な目的に開催しており、今年が5回目となります。宮古市では当センターが行った復興発掘調査は合計30遺跡を数え、発掘した面積の合計は19万㎡以上。全県で実施した復興調査の四分の一が宮古に集中する状況です。各時代にわたる貴重な調査成果を得て、今回は「里帰り」展として地元の方々にご覧頂く機会を設けることができました。
それでは開会前の準備作業の様子からご紹介します。
盛岡から運び込んだ展示品はトラック1台分。コンテナのまま展示コーナー別に仕分けしていきます。
展示品を並べる前に、解説パネルや写真のセッティングを行います。右はレーザーで水平を合わせる機械。パネルが傾いたりしないよう気をつかう所です。
こちらは宮古市教育委員会の調査紹介コーナー。職員の方3名が展示作業に加わりました。
展示作業が終わったら最終確認。お客様の目線になって微調整を行っていきます。
受付も整いました。感染拡大防止のため、受付では検温、手指消毒と、万一に備えた連絡先の記入もお願いすることになりました。
無事23日の開幕を迎えました。初日の午前中から大勢のお客様で賑わっています。皆さん広い会場でゆったりと時間をかけてご覧いただいています。
ここから各ブースの紹介をしていきます。今回は遺跡が所在する地区別の展示構成としました。最初に旧川井村、新里村の遺跡から。手前は縄文時代中期の集落跡が見つかった袰帯遺跡、奥側が縄文時代後期の岩井沢遺跡になります。
こちらは旧田老町にある乙部野Ⅱ遺跡の出土品。弥生時代前期の火災にあった住居跡から、当時使われた土器類がまとまって見つかりました。
津軽石地区では、奈良時代の大規模な集落跡が見つかった津軽石大森遺跡の資料が目を引きます。煮炊きに使われた細長い土器に加えて、左手前は全体が赤く塗られた壺。こうした赤彩土器は内陸(北上市・花巻市付近)に多いことから、これらの地域との交流がうかがわれます。
宮古中心市街地にほど近い、千徳城跡、青猿Ⅰ遺跡等では、急斜面に囲まれた尾根上から古代の集落跡や中世の城跡が見つかりました。市街地付近の遺跡は同じように尾根上に立地するものが多い特徴があります。
山口地区にある高根遺跡は縄文時代中期の大規模な集落跡で、完全な形に復元された大型の土器が多数出土しました。それらの中でも見栄えのする土器を集合させると、この迫力です。
最後に宮古市教育委員会が調査した遺跡の紹介コーナーです。こちらも縄文時代から近世に至るまで数多くの調査成果が盛りだくさん。崎山貝塚縄文の森ミュージアムでの復興調査展と同時開催となりました。
この展示会の特徴は、なんといってもガラス越しではなく間近に展示品を観察できること。感染対策のために手を触れることはご遠慮いただきましたが、皆さん一つずつじっくりとご覧になっています。
「ほら、あんだの家(え)の近ぐでねが?」なんてセリフが聞こえてきそう。
小さいお子さんには内容が難しかったかも知れませんが、いろいろ反応してくれるのを見るだけでスタッフ一同テンション上がります!
「壊れていなければこんなに大きかったの?」「そうだよねえ~」
思いもよらない鋭いご質問を受け、解説にも熱が入ります。
25日には山本宮古市長さんにもおいでいただきました。「急がれる復興事業の中でも文化財の保護は非常に重要で、地域おこしの力になる」というお言葉を頂戴し、説明にあたった職員も感激していました。
4日間でご来場いただいたお客様は合計446名。アンケートでは、
「自分の住んでいる宮古で、はるか昔から人間の営みがあったことにおどろきます。学生にぜひ現地をみてもらいたい。」
「すばらしい状態で見れて感動しました。又、展示されていない地域の出土品も見たいです!おねがいします!」
「幅広い時代のものが見られてとても良かった。有料でもいいと思います。私の実家の近くの遺跡もあり実際に出土したものを見られる良い機会でした。」
といったご感想が寄せられました。
これを励みに、まだまだ紹介しきれていない膨大な復興調査の成果についても、展示会を含めて様々な形で発信していきたいと決意を新たにしています。
2021年11月26日掲載
※このホームページは公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターが、調査した遺跡の情報を提供しています。 掲載されている情報の無断転載はできません。