イベントレポート
宿戸遺跡 現地説明会レポート
平成29年10月28日(土)、宿戸遺跡の現地説明会が開かれました。宿戸遺跡は岩手県沿岸の最北端の洋野町にあります。今回の調査ではどんな発見があったのでしょうか。
宿戸遺跡の発掘調査は三陸沿岸道路建設に伴い行われたものです。調査は今後も続きますが、今回はこれまでに見つかっているものについての説明会です。宿戸遺跡は海岸からは約450m、標高は35~53mの丘陵上にあります。国道45号のさらに西ということで、説明会にいらした方々の駐車スペースをとることができないため、宿戸漁港に駐車スペースを借りて、そこから皆様を現場までバスで輸送することにしました。
はるか南の海上では台風22号が発生したということですが、洋野町付近はやや波が高いものの、さわやかな秋晴れの絶好の現説日和です。10時ごろから少しずつお客さんが集まってきました。ある程度人数が集まると現場までピストン輸送です。
現場への入り口にテントが設置されており、出土遺物が陳列されています。みなさんが興味津々と言った面持ちで土器や石器を見ているので調査員の説明も力が入ります。
11時、現地説明会が始まりました。担当調査員の紹介のあと、小高い丘の上に移動します。標高差約20mといったところですが、運動不足の身にはちょっとこたえます。
丘の上から東の方角を眺めると、太平洋がひろがっています。海の色は碧く、水平線のほど近くには沖をゆく船も見ることができます。目を遺跡に戻せば、そこには地面を丸く掘りくぼめた真ん中に石が整然と並べられています。今から4000~5000年もの昔、縄文時代中期の人々のつくった住居跡と炉のあとです。4000年以上もずっとこわれずにあったということに感動します。
さらに、その近くには形の違う穴がふたつ、ひとつは細長い溝形、もうひとつは円形です。どちらも狩猟のための落し穴です。形が違うのは作られた年代が違っているからです。上の細長い溝状の穴はどのように埋まったのかを観察するため、半分だけ掘っています。まわりを見渡せば、まだ掘られていない陥し穴とおぼしき黒い影も見ることができます。
丘の上の平坦部にはまだ他にもたくさんの住居やほかの遺構の跡が見られます。壁際に沢山の穴が巡っている住居は、床面から底の尖った土器が見つかっており、縄文時代早期前半のものと考えられるということです。また、別の住居は床にあたる地面の一部が赤く焼けており、今から6000~5000年くらい前の縄文時代前期のものと考えられるということです。縄文時代早期から前期・中期まで、見つかった住居の時代は何千年以上にもわたっています。この土地が色々な時期に人々に利用されてきたということに驚きを感じます。
さて、ひととおり住居跡や落し穴を見終わった後で、丘を下り、テントの下の遺物をもう一度見てみると、最初に見たときとはまた遺物の印象がかわってきます。同じ縄文時代とは言っても早期の土器と中期の土器はずいぶんと違うものです。また、人を描いたと思われる石製品や北海道産かもしれない石材を用いた磨製石斧など、この遺跡に住んでいた人々の暮らしを想像すると、興味は尽きません。
今回の現地説明会は天候にも恵まれ、大変に充実した内容になりました。参加していただいた86名の皆様、本当にありがとうございました。
当日の資料は、こちらから。
2017年10月31日掲載
※このホームページは公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターが、調査した遺跡の情報を提供しています。 掲載されている情報の無断転載はできません。