イベントレポート
北条館跡 現地説明会レポート
7月27日(土)、紫波町北日詰の北条館跡で現地説明会が開催されました。北条館跡は北上川右岸、志波南大橋の南側にあり、昨年度から調査を行っています。この調査は北上川沿いに堤防を建築することにより、遺跡が消滅するために行われた緊急発掘調査です。南北に流れる北上川の川沿いに堤防がつくられるので、調査区は南北に細長い形になります。
7月も下旬となると、気温が30度をこえる日が続きますが、今回の調査でどんな発表があるかと期待すると、多少の暑さなど気になりません。北条館跡は北上川のすぐ近くにあるせいか、ときおり涼しい風が吹き抜けます。
11時30分、現地説明会がはじまりました。所長のあいさつ、担当調査員の紹介に引き続き、調査全体の概要説明がおこなわれました。そのあと、いよいよ見つかった遺構の見学です。調査区全体に柱穴などの遺構がみつかっているので足の踏み場もない状況です。ロープで仕切られた狭い通路をとおって移動します。遺構を回りながら、調査担当者の説明を聞きます。参加者の皆さんも聞きたいことがたくさんあるようですが、一つ一つ聞いていると遅くなってしまうので、質疑応答は最後になりました。
中世の堀跡です。昨年度の調査では2条、今年はさらに2条の溝がみつかっています。調査員の立っているのは今年みつかった堀跡です。城を区画するものと考えられます。
中世の掘立柱建物跡です。赤白のピンポールの立っているのは建物の柱の穴のあとで、そこから推定される建物をテープで示しています。時々テープが重複しています。同時に二つの建物が建つことはできないので、その新旧を明らかにするのも調査の目的の一つです。
北条館跡では竪穴建物もみつかっています。現地説明会の時点ではもう取り除きましたがこの竪穴建物からは炭化材が見つかっており、焼けて崩れた跡ではないかとみられます。竪穴住居にも重複しているものがあり、建物が使われなくなった後での土の埋まり方で新旧関係がわかります。
竪穴建物や掘立柱建物以外にも北条館跡からはさまざまな遺構がみつかっています。出土した遺物によって遺構の時期が分かる場合があります。
調査員の手前の小さな穴からは12世紀のかわらけがみつかっており、この時期のものだと推定されます。また、炉のあともたくさん見つかっています。
最後に、今年度の調査で出土した遺物の一部を紹介します。
12世紀の遺物としてはかわらけや国内産の陶器片や中国産の磁器片など、中世の遺物としては国内産の陶器片や中国産の磁器片などのほか、碾き臼や銭貨(永楽通宝など)・金属製品(刀子・毛抜?)が出土しており、往時の生活をうかがい知ることができます。
最後に、北条舘は名前の由来や誰がいつ頃に築いた城館であったかなどは今のところわかっていないとのことですが、今回の調査でたくさんの遺物や遺構がみつかっており、今後も新たな発見があると期待されます。暑いところ参加して下さった140人の皆様、本当にありがとうございました。
当日の資料はこちらから。
2019年8月6日掲載
※このホームページは公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターが、調査した遺跡の情報を提供しています。 掲載されている情報の無断転載はできません。