イベントレポート

高根遺跡 現地説明会レポート

 平成28年8月20日13:00から、宮古市山口の高根遺跡で現地説明会が行われました。高根遺跡の調査は、三陸沿岸道路の建設に伴う復興関連発掘調査です。調査は平成26年4月に開始され、今年の9月に終了する予定です。調査3年目にしてようやく実現した現地説明会に、悪天候の中にもかかわらず、71名の方に訪れて頂きました。本当にありがとうございました。

 2,300㎡の調査面積に対し、縄文時代の竪穴建物跡約100棟、フラスコ状土坑約500基、遺物包含層3か所、時期不明の製鉄炉2基などの遺構が見つかりました。遺物は、縄文時代中期中葉(約4,500年前)を中心とした土器類の他、石器類、土製品、石製品、骨・貝類、製鉄関連遺物(鉄滓・羽口)が見つかっています。

 縄文時代の竪穴建物跡とフラスコ状土坑の組み合わせ自体はよくありますが、今回の調査区のような急斜面地に高密度で確認されることは珍しく、常識を覆す特異な例と言えます。さらに調査範囲の外側にはまだまだ多くの遺構群が連なるものと予想されます。

 

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 いつもの現地説明会と同様、調査員の紹介と概要説明の後で現場へ移動します。ただし、今回の調査現場は事務所からとても遠い所にあり、歩いていくのは困難なため、バスに分乗して調査現場に向かいます。車で移動しても10分程度かかる距離です。

 

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 ようやく現場に到着しました。調査区は目の前に迫る急斜面です。調査区を取り囲むように何段にも足場が組まれ、排土搬出のベルトコンベアーが設置されています。急斜面地に遺構が密集して見つかったため、このような安全対策を講ずることでようやく調査が可能となりました。作業用通路をそのまま見学用通路として、説明会は進められていきます。

 

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 斜面下部では、竪穴建物跡が重複して見つかりました。石で組んだ炉跡や、壁際を巡る柱の跡が確認できます(左写真)。3年間の調査で見つかった竪穴建物跡の総数は約100棟に上ります。それにしても雨に負けず作業してくれた皆さん、そして熱のこもった説明をしてくれた調査員さん、本当にご苦労様でした。

 

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 高根遺跡の目玉といえば何といってもフラスコ状土坑です。斜面上部から尾根上にかけての範囲で高密度に分布しています。一つの穴の大きさは直径2m×深さ2m前後もあり、底の方が少し広がっています。このような穴が全部で約500基も見つかりました。用途は主に食料となる堅果類の貯蔵用と考えられていますが、ゴミ捨て場として、あるいは獣を獲る落とし穴として使われた可能性もあります。それにしても道具の乏しい時代に一体どうやって身長以上もある穴を掘ったのでしょうか?縄文人のパワーと知恵は我々の想像をはるかに超えるようです。 

 

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 ようやく頂上まで登ってきました。下からの比高差は約50mもあります。すぐ下を見るとスキーの上級者コースのような急斜面で、転がり落ちたら…と思うとゾクっとしますが、遠くには宮古の市街地を見渡すこともでき、なかなかの絶景です。このような急峻な場所にわざわざ生活の拠点を築いた縄文人の気持ちが少し分かるような気がしました。下の写真は参加者の質問に答える調査員です。

 

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 3年間の調査で出土した遺物の数々が所狭しと展示されています。土器はいずれも縄文時代中期頃のもので、石器類は、石鏃・石匙・石錐・敲石・凹石・石斧・石皿・石棒・耳飾りなど多種多様です。キノコ形土製品・斧状土製品(左下写真)・三角壔形石製品(右下写真)など、用途の分からないものもあります。さらに、縄文人が食べたと思われる動物や魚の骨、貝類なども出土しました。魚の骨はサケ・アジ・サバ、貝はシジミ類など、現代人になじみの深い種類も見受けられます。縄文人のパワーの源はやはり豊かな食生活にあるのでしょうね。

 

当日資料は、こちらから

2016年8月25日掲載

※このホームページは公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターが、調査した遺跡の情報を提供しています。 掲載されている情報の無断転載はできません。

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